2023年6月から東京電力でも規制料金・低圧自由料金の値上げが行われる予定です
2022年秋から新電力※1 や、大手電力会社の自由化以降に新設されたプランの「改悪」が話題になっています。
auでんきやソフトバンクでんき、ENEOSでんきなどは、11月から燃料費調整額の上限撤廃。
楽天でんきやLooopでんきなども、市場価格連動型のプランに変わりました。
上記のサービスを利用している場合、この冬は今までより電気料金が高くなる可能性が高いです。
当記事では、なぜ電気料金が高くなるのか、新電力を利用している方がどこに切り替えるべきなのか(上限のある大手電力会社の従量電灯プランに戻る方法)をわかりやすく解説します。
目次
電気代が高くなる理由は「燃料費調整額」の高騰
電気料金は、下記を合算したものです。
→ 使用量に関わらず払う金額
②電気量料金
→ 使用量に応じて払う金額
③再生可能エネルギー発電促進賦課金
→ 再生エネルギー普及のために払うお金
使用量は変わらないのに電気代が高くなる理由のひとつが、電気量料金にかかる「燃料費調整額」の高騰です。
燃料費調整額とは
電気量料金は、火力発電に用いる原油や液化天然ガス、石炭など燃料費価格の変動に応じて「燃料費調整額」を加算(プラス調整)したり、差し引き(マイナス調整)して計算します。
=燃料費調整額
燃料費調整単価は、3か月の貿易統計価格にもとづいて決まり、2か月後の電気料金に反映されます。
世界的なエネルギー不足や世界情勢の悪化、円安によって、今年に入ってから燃料価格と燃料費調整単価は上がり続けています。
日本は発電のための燃料の多くを海外から輸入しています。
著者自宅の8月の電気料金の明細を比べてみたところ、昨年は燃料費調整額が「-733円」でしたが今年は「1090円」でした。
この冬、燃料費調整額の「上限」を撤廃するサービスが急増
東京電力や関西電力など、地域を管轄する大手電力会社の昔からあるプラン(従量電灯という規制部門)では、燃料価格高騰時の利用者の負担を軽減するため、調整される料金に上限を設定しています。
そのため、基準燃料価格の1.5倍以上は、電力料金に反映されないようになっています。
しかし、新電力と呼ばれる小売電気事業者が提供する電気サービスには、燃料費調整額の上限を設定する決まりがありません。
燃料価格が高騰すると、上限を設定しているプランより電気料金が大幅に高くなる可能性があるのです。
基本料金や最低料金、従量料金の単価はそのままでも、今後、多くの電力会社で燃料費調整制度における上限設定の廃止が行われます。
auでんき、UQでんき、Pontaでんき、BIGLOBEでんき、じぶんでんき、ANAでんき、ARUHIでんき、JAFでんき、NCでんき、SKE48でんき、いいだのでんき、グランパスでんき、グローバルポイントでんき、ピクシブでんきプラン、ペルソナでんき、めぶきdeでんき、モンストでんき、ゆめカードでんき、よみぽでんき、四季でんき、でんきクラブ(タカシマヤコース)、ケーブルプラスでんき、ENEOSでんき、ドコモでんき、ソフトバンクでんき、J:COM電力、大阪ガスの電気など
※九州電力、四国電力、中部電力、東北電力、北海道電力の一部プランでも上限撤廃される
「市場連動型のプラン」になると、さらに電気代が高騰するかも
また、楽天でんき(プランS、プランM、動力プラン)では2022年11月から、Looopでんきでは12月から、燃料費調整単価を日本卸電力取引所(JEPX)の電力取引価格に連動した市場価格調整単価に変更しました。
※Looopでんきは、独自の燃料費調整額(電源調達調整費)を導入しているものの、日本卸電力取引所(JEPX)の電力取引価格に連動している
市場連動型のプランは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格(市場価格)に連動して、30分ごとに電気料金の単価が決まります。
電気料金の「従量料金」の部分や「電源調達調整費」などが市場価格に連動します。
そのため市場価格が安いときは電気料金が安くなるものの、高騰したときは電気料金もかなり高くなる可能性があります。
2020年12月~2021年1月にかけては、寒波による電力需要の増加や火力発電の燃料不足によって、卸電力市場の価格が高騰し、市場連動型のプランを利用している方の家計に大きなダメージを与えました(1kWhあたりの電気の価格が、前年の平均価格の10倍程度まで上昇した)。
【参考記事】電気代急騰おそれ 市場価格と連動のプラン|朝日新聞デジタル 2021年1月14日 配信
今年の冬も燃料価格の高騰は続きそうなので、市場連動型のプランを利用している方は、早めに切り替えを行ったほうがいいと思います。
上限撤廃、市場連動型プランに変わる場合、どうすればいいのか?
2016年4月に「電力(小売)自由化」が行われました。
それまでは、東京電力や関西電力など「その地域を管轄する会社」と契約する必要がありましたが、さまざまな会社が電力の小売販売に参入し、私たちは地域の枠を超えて電力事業者を選べるようになったのです。
自由化によって、料金が安くなったり、ポイントがたまるようになったり、環境にやさしい(発電方法を優先してつくられた)電気を選べるようになったりとさまざまなメリットを享受できたものの、ここにきて大きなデメリットが発生してしまいました。
・市場連動型へのプラン変更
燃料価格が高騰し続ける中で電気代を抑えるには、燃料費調整額の上限が設定された、市場連動型ではないプランへの切り替えが必要です。
しかし、新電力と呼ばれる小売電気事業者が提供する電気サービスに切り替えると、その会社も今後同じ道をたどる可能性があります。
上限撤廃で電気代はどれくらい上がるか? 著者自宅の場合
auエネルギー&ライフが提供するでんきサービスでは、11月から燃料費調整額の上限撤廃が告知されています。
著者自宅(東京電力エリア)で去年の冬と同じくらい電気を使うと、下記の影響が予想されます。
月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
---|---|---|---|---|---|
使用量 | 130kWh | 269kWh | 335kWh | 283kWh | 156kWh |
影響額 | + 383円 | + 791円 | + 985円 | + 832円 | + 458円 |
※auでんきのシミュレーターでの試算結果。2022年10月時点 |
※シミュレーターは、2022年10月の燃料費調整単価で試算しているので、実際の請求金額とは異なる(より高くなる可能性もある)
auでんき(UQでんき)の場合、使用量ごとのポイント付与やスマホ料金の割引といったメリットがあるものの、電気料金自体は、地域に根ざした大手電力会社の「従量電灯」と同じです。
そして、大手電力会社の従量電灯には、燃料費調整額の上限が設定されています。
しかも、auでんき(UQでんき)をやめても、UQモバイルの自宅セット割(でんきコース)は、2023年9月まで割引を適用することが発表されました。
また、2023年1月~9月利用分まで、低圧での契約に対して「1kWhあたり7円(税抜6.37円)」が自動的に値引きされます。
大手電力会社のプランにも、上限設定のある「規制部門」と設定しなくてもいい「自由化部門」がある
東京電力に出戻るためにホームページを確認したところ、自由化以降に新設された「プレミアム」「スタンダード」「夜トク」プランが推されていて、戻りたい「従量電灯」プランは、ホームページから契約できない仕様になっていました。
電力料金のプランは自由化前後で2種類に分けられます。
規制部門とよばれるプランは、自由化以前からあるもので大手電力会社の従量電灯プラン(東電の従量電灯B)などがあてはまります。
規制部門は、料金自体が法律で定められ、燃料費調整額の上限が設定されています(基準燃料価格の1.5倍以上は、電力料金に反映されないようになっている。上限金額は電力会社によって異なる)。
自由化部門とよばれるプランは、2016年4月の自由化以降につくられたもので、燃料費調整額の上限設定の決まりがありません。上限設定されているサービスとないサービスがあるのです。
※実家が自由化部門の新プラン(スタンダードS)になっていたのですが、この記事のやり方でカスタマーセンターに電話したところ旧プラン(従量電灯B)に変更できました
上限が設定されていない新プラン(自由化部門)のほうが、燃料費調整単価が高くなります。
東京電力の場合(2022年11月分)
旧プラン(規制部門):5.13円/kWh
新プラン(自由化部門):9.72円/kWh
大手10社が発表した2022年11月の電気料金は、現行制度の(燃料費調整制度の)上限に到達しています。
燃料の調達費が高止まりしているため、燃料費調整額の上限を撤廃する会社が増えているということです。
上限のある従量電灯プランに戻る方法(東京電力の場合)
1.「供給地点特定番号」を調べてメモしておく
供給地点特定番号は、電気を使う場所を特定するために設定された22ケタの番号です。
利用している電気サービスの検針票や請求書で確認できます。
auでんき(UQでんき)の場合、myauにログイン → 画面上部にある「auでんき」をクリックすると、ご使用場所という部分に供給地点特定番号が表示されます。
2.東京電力に電話
受付:月曜日〜土曜日(日曜日・祝日・年末年始を除く)9時〜17時
※切り替わるのは次の検針日なので10月20日
- 契約名義人の氏名
- 電話番号
- 供給地点特定番号
- 住所
- 利用中の会社名
- (自動解約のために)使用中の小売電気事業者のお客さま番号/ご契約番号
- エコキュートなどを使っているか?
- 切り替えたいプラン名、アンペア数
最後に切り替えるプラン(従量電灯B)の説明を聞き、電気代の請求方法などの話をして終了しました。切り替え日を聞いたら、メモしておきましょう。
私が利用しているauでんき(UQでんき)は「小売電気事業者のお客さま番号/ご契約番号」を伝えたので、東京電力に切り替わった時点で自動解約されます。
ただし、一部の電力会社では電話連絡が必要な場合もあるそうです。
楽天でんきのホームページでは「解約の連絡は不要」と書かれているものの、東京電力の従量電灯プランに切り替える場合は、電話での連絡が必須だそうです。電話したら、先ほど東京電力で聞いた「切り替え日」を伝えましょう。
東京電力・従量電灯Bの電気代(2023年1月)
2022年12月19日~2023年1月18日まで(31日間)の電気代は、301kWh使用で1万622円でした。
燃料額調整費に関係ない東電の「アクアエナジー100」はどう?
SNSを見ていると、100%水力発電で燃料額調整費が適用されない、東京電力の「アクアエナジー100」というプランに切り替える方も見受けられました。
しかし、アクアエナジー100は、基本料金が従量電灯プランの倍近いので、燃料価格が落ち着いてくると電気代が割高になる可能性があります。
東京電力 アクアエナジー100の料金
基本料金
10A | 15A | 20A | 30A | 40A | 50A | 60A |
---|---|---|---|---|---|---|
561円 | 841.5円 | 1122円 | 1683円 | 2244円 | 2805円 | 3366円 |
※2022年10月時点 |
電力量料金(円未満切り捨て)
最初の300kWhまで:23円83銭
300kWhをこえ1kWhにつき:30円57銭
+ 再生可能エネルギー発電促進賦課金(円未満切り捨て)
東京電力 従量電灯B(旧プラン)の料金
基本料金
10A | 15A | 20A | 30A | 40A | 50A | 60A |
---|---|---|---|---|---|---|
286円 | 429円 | 572円 | 858円 | 1144円 | 1430円 | 1716円 |
※2022年10月時点 |
電力量料金(円未満切り捨て)
最初の120kWhまで:19円88銭
120kWhをこえ300kWhまで:26.48銭
300kWhをこえ1kWhにつき:30円57銭
+再生可能エネルギー発電促進賦課金(円未満切り捨て)
電気料金の高騰が続く中、岸田総理は10月3日に行われた所信表明演説で「家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない思いきった対策を講じます」とコメントしました。
政府は来春からの急激な値上げに対して新たな負担軽減策を導入する方針です。
また東京電力は、2023年6月に規制プランの料金の引き上げを検討しています。
節約を心がけつつ、電気代が上がりすぎないようプランの見直しや切り替えが必要になりそうです。
燃料費調整額の上限を撤廃するサービスを使っている場合は、上限のある大手電力会社の従量電灯プランへの切り替えを検討してもいいと思います。
市場連動型プランに切り替わった楽天でんきやLooopでんきをお使いの方は、切り替えをオススメします。
燃料価格が落ち着くまでは、昔のプランに出戻りするのがよさそうね。
Can You Survive?
これ以上電気代が上がったら家計がヤバい! なんとかして!!